018.ツアー1989 / 中島京子

ツアー1989

ツアー1989

中島さんの本は最初に不思議な文章があり、それを謎といていくスタイルが多いように思えます。今回は何年も前に書かれた、いろんな人の手を渡って届いた不思議な手紙。そこには「迷子ツアー」というツアーの話が書かれています。ちなみにこの「迷子ツアー」。何人かでツアーに行き、帰ってきた時にひとりいなくなっている、その人は「迷子」とか呼ばれていて、そのツアーの参加者の中でも存在感がかなり薄い人。いなくなっても気がつかない。確信が持てない。そんなちょっとしたミステリアスな気分を最後に余韻として残すところが売りのツアーだったそうな。この架空具合がよい塩梅。システムはなかなかおもしろかったのですけど、その辺のディティールは浅かったかな。ここで深みを増していくと、グッと昔の小林恭二みたいになってグッと自分好みになっていきますが、さらりといってしまいました。最終的には「虚」とか「無」とかいう話になっていくわけなんですけども。そしてなぜかハッピーエンドになるわけなんですけど。