078.腑抜けども、悲しみの愛を見せろ / 本谷有希子

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

これの元がほんとに戯曲なのかい?これを舞台で再現したというのが信じられん。
それがまあほんとなのだが。アマゾンヌさんには置いてないのだが。
戯曲だ、というのが頭にあるからいけないのか、とにかくト書きよりセリフばかりを追いたくなってしまう。ト書きを読むのがまどろっこしいのだ。早く、早くセリフを!
ある田舎町に住んでる家族。母と父、長男とその嫁、次女がその家に住んでいる。長女は東京で女優をやっている。普段車も通らないような道にダンプが走ってきてその家の父母をひき殺す。ところから話は始まる。以下、軽くネタばれ。しかも書きかけ。
長女はこれまた病的に特別な人間でありたい。女優という職業は天職で、自分以上の女優はいないと思っている。まぁとにかく天井がないぐらい思い上がっている人間。とにかく最大限の愛を集めたい人間。それを「こんなにおもしろい人間はいない!」と近くで見ている妹は、このおもしろさをいろんな人に知ってもらいたいという愛とロバ耳で、つい姉をモデルにしたマンガを書いてしまう。長男は愛が欲しい長女をわかっていて、それでも愛がもらえない、誰の特別になれない長女をなんとかしたい一心で、「おまえはオレの一番特別な人間だ」と言いそういう仲になってしまう。長男の嫁は病的に従順で、とにかく誰かに気に入られたい。長女と真逆で誰かに捨てられたくない、という気持ちが最大限に強い人。この4人が同じ家にいるのだから事件が起こらないわけがないのだけれど。妹はおねえちゃんがおもしろくてしょうがなくて、お姉ちゃんは長男の愛だけが最後の砦で、長男の嫁はみんなに好かれたくて顔色をうかがう。なんか…うまくいってるな、この家は、と思ってしまった。